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外注の選び方

経理を外注すると社内に何も残らない?デメリットと「残し方」

経理の担当者が辞めることになった。求人を出しても、なかなか決まらない。そんなときに考えるのが、経理の外注です。

調べてみると、「経理のアウトソーシングはやめとけ」という声も見つかります。よく挙がる理由は、「外に出すと、社内に何も残らない」というものです。

外注には、たしかにデメリットがあります。ただ、その多くは、始める前の決め方で小さくできます。この記事では、経理の外注のデメリットを整理したうえで、外注しても手順と判断を会社に残す方法と、契約のときに確かめることを紹介します。

経理の外注でよく挙がるデメリット

先に、よく挙がるデメリットを並べます。どれも外注をやめる理由というより、始める前に手当てしておくことです。

デメリット 起きやすい場面 手当て
社内に知識が残らない 委託先を替える、契約を終える、社内に戻す 手順書・判断表・録画を、会社のものとして受け取る
やり取りに時間がかかる 急ぎの支払、取引先からの問い合わせ 連絡の方法と、返事の目安を決めておく
頼める範囲に限りがある 契約にない作業、紙や現金の扱い 業務ごとに範囲を決め、社内に残す作業も決める
税務は税理士の業務になる 税金の相談、申告書の作成 顧問の税理士の方との分担を決める
情報を社外に出すことになる 口座、給与、マイナンバー 権限を絞り、取り扱いを契約で決める

1. 社内に知識が残らない

いちばんよく挙がるデメリットです。外注している間は、業務は回ります。ところが、委託先を替えるときや、社内に戻すときに、「どうやっていたのか」を社内の誰も説明できない状態になります。

毎月受け取っているのは、仕訳や請求書、試算表といった「処理の結果」です。結果だけを見ても、どういう手順で、どういう判断で処理したのかはわかりません。

2. やり取りに時間がかかる

社内に担当者がいれば、隣の席で聞けば済みます。外注すると、質問や依頼はチャットやメールになり、返事を待つ時間が生まれます。

領収書や請求書などの資料を、委託先に渡す手間もかかります。紙の書類が多い会社では、スキャンして共有する作業が社内に残ります。

3. 頼める範囲に限りがある

外注できるのは、契約で決めた業務です。範囲にない作業は、追加の料金になるか、引き受けてもらえません。

振込の承認や、取引先との条件の交渉は、会社が決めることです。郵便や現金の扱いのように、その場にいないとできない作業もあります。リモートの委託先に頼む場合、これらは社内に残ります。

4. 税務は税理士の業務になる

税務代理、税務書類の作成、税務相談は、税理士の業務です(国税庁「税理士の業務」)。日々の処理を外注する場合も、税金の相談や申告は、顧問の税理士の方との分担を考えておきます。分け方は、このあとの章で表にしています。

5. 情報を社外に出すことになる

口座の明細、給与、取引先との条件など、経理には社外に出したくない情報が集まっています。外注すると、その一部を委託先に渡すことになります。

給与や源泉徴収の業務では、マイナンバーを扱うこともあります。マイナンバーを含む業務を委託するときの、委託先の選び方や監督の考え方は、個人情報保護委員会のガイドラインに説明があります(個人情報保護委員会)。

「やめとけ」と言われるのは、どんな外注のしかたか

外注が合う業務もあれば、つまずきやすい頼み方もあります。

外注が合いやすい 外注でつまずきやすい
手順が決まっている定型の作業(入力、請求書の作成、消込) 判断が多い業務を、判断の基準ごと任せきりにする
量が毎月ほぼ同じ 業務の中身を誰も知らないまま、外に出す
社内に、結果を確かめる方がいる 社内の窓口が決まっていない
資料が電子で集まる 紙の書類が、あちこちに散らばっている

つまずきやすい頼み方には、共通点があります。業務の中身を社内の誰も把握しないまま、外に出していることです。そうなると、委託先のやり方が、そのまま会社のやり方になります。契約を終えたときに何も残らないのは、このためです。

手順が決まっている作業は、外注する前に、今のツールの中で自動化できないかも考えておきます。外に出す量そのものを減らせることがあります(属人化した業務は、退職をきっかけに解消する)。

残らない理由は「手順と判断が委託先の中にある」こと

外注して社内に何も残らないのは、手順と判断が、委託先の担当者の頭の中や、委託先の資料の中にあるからです。

たとえば、入金の消込を外注している場合を考えます。毎月受け取るのは、「消込が終わった」という結果です。次のようなことは、委託先の中にしかありません。

  • どの取引先が、どんな名義で振り込んでくるか
  • 振込手数料が差し引かれていたときに、どう処理しているか
  • 入金が遅れている取引先に、いつ、誰が連絡しているか

これらを会社の手元に残すには、処理の結果だけでなく、手順と判断も「納品物」として受け取る必要があります。

外注しても社内に残す5つの方法

1. 手順書を、会社のものとして受け取る

業務ごとの手順書を、納品物に入れてもらいます。委託先が社内向けに持っている手順書でも構いません。大事なのは、会社のフォルダに置き、契約が終わっても会社が使えることです。業務のやり方が変わったら、手順書も更新してもらいます。

2. 判断表をつくり、判断は会社に残す

判断が必要な場面は、「誰が決めるか」を表にしておきます。

場面 決める方 委託先がすること
請求書の金額が、発注のときの金額と合わない 発注した部署 気づいた時点で、窓口の方に知らせる
規程にない経費の精算 社長 内容をまとめて、確認を依頼する
入金の遅れ 社長、または営業の責任者 遅れている取引先の一覧をつくる
勘定科目に迷う取引 顧問の税理士の方に確かめる 迷った取引を一覧にしておく

判断を委託先に任せきりにしないことで、判断の基準が会社に残ります。

3. 画面の録画を残す

手順書だけでは、どの画面のどこを見ているかまでは伝わりません。主な業務は、委託先に画面を操作しながら説明してもらい、録画しておきます。1本を3〜5分に区切り、「業務名+場面」の名前を付けると、あとから探しやすくなります。つくり方は引き継ぎマニュアルの作り方で紹介しています。

4. アカウントと資料は、会社が持つ

会計ソフト、ネットバンキング、共有フォルダの管理者は、会社が持ちます。委託先には委託先専用の利用者を発行し、権限は業務に必要な分だけにします。契約が終わったら、その利用者を止めます。

帳簿や証憑も、会社のフォルダに保存します。法人の帳簿書類は、原則として、確定申告書の提出期限の翌日から7年間(欠損金が生じた事業年度などは10年間)保存することになっています(国税庁 No.5930)。委託先のシステムの中にしか資料がない状態は避けます。

5. 月次の報告で、中身を見えるようにする

毎月の報告に、処理の結果だけでなく、次の項目を入れてもらいます。

項目 内容
処理した業務 件数と、終わっていないもの
保留しているもの 資料が足りないもの、確認を待っているもの
例外と判断 いつもと違う処理と、誰がどう決めたか
来月の予定 年末調整や法定調書など、年に一度の業務の準備
手順の変更 手順書や判断表を書き換えたところ

報告を読むだけで、業務の中身が少しずつ社内にたまっていきます。社内の方が一人でも読んでいれば、委託先を替えるときも、ゼロからにはなりません。

契約のときに確かめること

外注を始める前に、次の項目を確かめておきます。あとから変えにくいのは、納品物と、終わるときの引き継ぎです。

項目 確かめること
業務の範囲 どの業務を、どこまで頼むか。範囲にない作業を頼むときの扱いと料金
納品物 処理の結果のほかに、手順書・判断表・録画を受け取れるか。形式と置き場所
納品物の使い方 契約が終わったあとも、手順書などを会社で使い続けられるか
連絡の方法 連絡の手段、返事の目安、急ぎのときの連絡先
アカウント 誰の名義の利用者を使うか。権限の範囲と、契約が終わるときの停止
情報の扱い 秘密保持、個人情報とマイナンバーの扱い、再委託の有無
期間と解約 契約の期間、解約の申し出の時期
終わるときの引き継ぎ 社内の後任の方や、次の委託先への引き継ぎを手伝ってもらえるか
税理士との分担 月次の資料を、誰が、いつ、顧問の税理士の方に渡すか

委託先を替えるとき、社内に戻すとき

外注したものを社内に戻す場面は、いずれ来るかもしれません。社内で後任の方を採用できたとき、委託先を替えるとき、業務の量が変わったときです。そのときに慌てないよう、次の順で進めます。

  1. 手順書と判断表を、最新にしてもらう 最後の月の処理まで反映されているかを確かめます
  2. 月次を一度、一緒に回す 委託先と社内の後任の方が、同じ月の処理を並んで進めます。画面の録画もこのときに撮り直します
  3. 年に一度の業務の予定を受け取る 次の年末調整や決算に向けて、何が途中まで進んでいるかを確かめます
  4. アカウントを止め、資料の扱いを確かめる 委託先の利用者を止め、委託先に渡していた資料の返却や削除の方法を確かめます

ここまでの「残し方」をしていれば、戻すときも、ゼロからの引き継ぎにはなりません。

税務申告・税務の相談は、顧問の税理士の方へ

経理の外注先と、顧問の税理士の方の役割を、あらためて分けておきます。

業務 経理の外注先 顧問の税理士の方 会社
日々の入力、請求書の作成、消込 行う ― 結果を確かめる
振込 振込データをつくる ― 承認して実行する
決算・申告に向けた資料の準備 集計して渡す 受け取る 内容を確かめる
税務申告、税務の相談 ― 行う 相談する

経理の外注先が税理士事務所の場合は、同じ事務所が両方を担うこともあります。どこに何を頼んでいるかを一覧にしておくと、担当の方が替わっても迷いません。

外注のほかに、社内の仮担当、派遣、オンラインアシスタント、採用などとも比べたい場合は、派遣・外注とのちがいで同じ観点から並べています。一人で経理を担当していた方が辞めるときの段取りは、一人経理が辞めると決まったらをご覧ください。

引継ぎ代行プラスでできること

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