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仕組み化

事務や経理が採用できないとき、採用の前に「業務を減らす」という選択肢

経理の担当の方が退職することになり、求人を出した。けれど応募が来ない。来ても、経理の実務経験がある方がいない。従業員が数十名の会社では、よく聞く話です。

採用活動は続けながら、もう1つ考えておきたいことがあります。後任の方に任せる業務そのものを、採用の前に減らせないかです。業務が減れば、後任の方に求める条件が下がり、採用の幅が広がります。場合によっては、同じ人数を採用しなくても回るようになります。

この記事では、事務・経理の採用の状況を公的な数字で確かめたうえで、業務を減らす進め方と、それでも採用した方がいい場合を紹介します。

数字で見ると、事務の仕事を探している人は多い

厚生労働省の「一般職業紹介状況」で、ハローワークでの職業別の有効求人倍率(求職者1人あたりの求人の数)を見ると、令和8年7月は次のとおりでした。

職業 常用(パートを含む) 常用(パートを除く)
職業計 1.05倍 1.16倍
事務従事者 0.36倍 0.37倍
一般事務従事者 0.29倍 0.28倍
会計事務従事者 0.56倍 0.52倍

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)について」の参考統計表(PDF)。季節調整をしていない原数値です。

1倍を下回るのは、仕事を探している人の方が、求人より多いということです。同じ資料で1年前と比べると、会計事務従事者(常用、パートを含む)の有効求人は9.1%減り、有効求職者は2.6%増えています。全国の数字で見るかぎり、事務や経理は、仕事を探している人が少ない職業ではありません。

それでも「採用できない」と感じるときは、求める条件が理由になっていることがあります。たとえば、経理の実務経験がある、今使っている会計ソフトに慣れている、1人で月次の締めまでできる、給与計算もわかる。条件を重ねるほど、当てはまる人は少なくなります。また、ここに挙げたのは全国の数字で、地域によってもちがいます。

言いかえると、後任の方に求める条件を下げられれば、採用の幅は広がります。条件を下げるには、後任の方に任せる業務を減らすのが近道です。

業務を減らすと、採用の条件が変わる

業務を減らす前 業務を減らしたあと(例)
求める経験 経理の実務経験がある方 手順書と判断表があれば、経験の浅い方でも担当できる範囲が広がる
働き方 フルタイムで1名 短時間の方や、社内の方の兼務でも回る可能性がある
探し方 外から採用する 社内の異動・昇格も候補になる
前任の方の判断 前任の方の頭の中にある 判断表として社内に残る

もちろん、すべての業務を減らせるわけではありません。どこまで減らせるかは、業務を書き出してみないとわかりません。ここからは、その進め方です。

1. 業務をすべて書き出す

最初に、今の担当の方の業務を、小さなものまで一覧にします。

項目 例
業務名 請求書の発行
頻度・期日 毎月末、翌月5日まで
月の時間 約25時間
使うツール 会計ソフト、表計算の請求管理表、メール
種類 作業/判断/現地(次の章で分ける)

ご本人の記憶だけでは抜けが出るので、カレンダー、送信済みメール、共有フォルダの更新履歴を見ながら進めます。退職が決まっているなら、前任の方が在職している間に一緒に書き出すのがいちばん確実です。書き出し方は、後任が決まらないまま退職日が来るときの記事でも紹介しています。

2. 「作業」「判断」「現地」に分ける

書き出した業務を、次の3つに分けます。

  • 作業 入力、転記、集計、書類の作成など、手順が決まっているもの
  • 判断 支払の確認、例外への対応、取引先との調整など、人が決めるもの
  • 現地 郵便、来客、現金、紙の書類など、その場にいないとできないもの

減らせるのは、主に「作業」です。「判断」は、基準を判断表に残したうえで人に残します。「現地」は、取引先の了承を得て請求書をメールで送る、届いた郵便物をスキャンして共有するなど、やり方を変えて減らせるものがあります。

経理総務の業務で分けてみると、たとえば次のようになります。

業務 分け方 減らし方の方向
預金・カードの仕訳の入力 作業 明細を取り込み、ルールで仕訳を下書きする
経費精算 作業 領収書を写真で受け取り、読み取った内容から下書きする
請求書の発行 作業 受注の一覧から下書きし、人が確認して送る
請求書の郵送 現地 取引先の了承を得て、メールでの送付に切り替える
給与計算の準備(勤怠の集計) 作業+判断 集計は仕組みに、例外の判断は人に残す
支払の確認・振込の承認 判断 判断の基準を残し、人が行う
取引先からの問い合わせ 判断 よくある質問は回答を下書きし、判断は人が行う
来客・電話・小口現金 現地 電話の転送や、現金を使わない精算に変えられるかを考える

1つの業務の中に、作業と判断が混ざっていることもよくあります。その場合は、業務をもう一段細かく分けて、作業の部分だけを取り出します。

3. 今のツールの中で、作業を減らす

作業を減らすときは、まず今使っているツールの中でできないかを考えます。ふだん触る画面が変わらないので、社内の方が新しい操作に慣れる手間がかかりません。

作業 今のやり方 減らしたあと 使うもの
預金・カードの仕訳の入力 通帳や明細を見て、1件ずつ入力する 明細を取り込み、決めたルールで仕訳を下書きする。人は確認だけ 会計ソフト
入金の確認 通帳と請求の一覧を見比べる 取り込んだ明細と請求の一覧を突き合わせ、合わないものだけ見る 会計ソフト、スプレッドシート
請求書の発行 受注の一覧を見ながら、1枚ずつ作る 受注の一覧から請求書を下書きし、確認して送る スプレッドシート、請求書の機能
月次の集計 いくつもの表から手で集めて、社長に報告する 集計表が自動で更新され、決まった日にチャットへ届く スプレッドシート、チャット
社内からの質問 「〇〇さんに聞いて」で担当の方に集まる 手順と判断表をまとめ、チャットから探せるようにする チャット、共有フォルダ

クラウドの会計ソフトには、銀行やクレジットカードの明細を取り込み、決めたルールで仕訳を下書きする機能を持つものがあります。すでに契約しているソフトに使っていない機能がないかを確かめるだけで、減らせる作業が見つかることもあります。

どの場合も、ツールがつくるのは下書きまでにして、確定や送信は人が行う形にしておきます。誤りがあっても、そこで止められます。

4. 業務専用の小さな社内ツールをつくる

紙やFAXが残っている業務や、いくつものツールをまたいでいる業務は、その業務専用の小さな社内ツールをつくって減らします。

  • FAXやPDFの注文書を読み取って一覧に並べ、人が確認してから受注を登録する
  • 取引先からの問い合わせを分類し、回答の下書きをつくる

基幹システムには手を入れず、入力の下書きまでをツールが受け持つ形にすると、社内のシステムを見ている方の負担も増えません。あわせて、仕組みで扱えない例外が来たときの置き場所と、業務が変わったときに直す担当も決めておきます。

進め方は属人化した業務は、退職をきっかけに解消するで詳しく紹介しています。受注入力の例は、営業事務・受発注の引き継ぎのページにもあります。

5. 減らしたあとで、後任の条件を決め直す

業務を減らしたら、残った業務をもとに後任の条件を決め直します。

  • 残ったのが判断の業務だけなら、判断表を手がかりに、社内の方が兼務できないか
  • 手順どおりの作業が残るなら、経験者でなくても、手順書で覚えられる方を探せないか
  • 月の時間が大きく減ったなら、フルタイムでなく、短時間の求人にできないか

求める条件が下がれば、応募できる方の数は増えます。

残ったメンバーには、目的を先に伝える

業務を減らす話は、残ったメンバーには「自分の仕事も減らされるのでは」と聞こえることがあります。目的は人を減らすことではなく、入力や転記にかかる時間を減らして、判断や社内外とのやり取りに時間を回すことだと、会社から先に伝えておきます。

仕組みをつくるときは、実際にその業務をしている方に、どこで手間がかかっているか、どこで間違えやすいかを聞きます。書き出した一覧だけでは見えない手間が、そこでわかります。

それでも採用した方がいいとき

業務を減らしても、採用した方がいいときがあります。

状況 理由
判断や調整の仕事が多い 支払の優先順位や、取引先との交渉は、仕組みに置き換えられない
現地の作業が多い 来客、電話、郵便、現金は、その場に人がいる必要がある
業務量が増えている 事業が伸びていて、減らした分以上に仕事が増えていく
仕組みを見る人が社内にいない 仕組みにも確認や手直しが要る。社内に1人は担当が要る

この場合も、先に業務を減らしておくと、後任の方が覚えることが減り、立ち上がりやすくなります。採用と業務を減らすことは、どちらか1つを選ぶものではありません。

退職のタイミングは、業務を減らすきっかけになる

業務を減らすなら、担当の方が退職するときが進めやすいタイミングです。

  • 業務をすべて書き出すので、ふだんは後回しになる棚卸しが進む
  • 前任の方に、なぜそのやり方なのか、例外をどう扱ってきたかを聞ける
  • 後任の条件を決める前なので、減らした結果をそのまま求人に反映できる

後任が見つかるまでの業務の回し方は後任が見つかるまでの業務をどう回すかで、上司が最初に決めることは部下が退職するのに後任がいないときの記事で紹介しています。

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