社内ナレッジAIの作り方|引き継ぎ資料・マニュアルに質問できるAIを小さく始める方法
社内ナレッジAIは、社内のマニュアルや引き継ぎ書、規程などを読み込ませて、社員が質問すると資料をもとに答えてくれるAIです。社内の問い合わせに答えるAI、社内チャットボットと呼ばれることもあります。
引き継ぎでは、後任の方が「〇〇のときはどうする?」と、前任の方や上司に聞かずに確かめられるようになります。前任の方が退職したあとも、残した資料に「聞ける」状態にできるのが大きな利点です。
この記事では、社内ナレッジAIを、大きなシステムを入れずに小さく始める方法を紹介します。
社内ナレッジAIでできること・できないこと
| できること | できないこと |
|---|---|
| 何十ページものマニュアルから、質問に合う部分を探して答える | 資料に書いていないことを、正しく答える |
| 「〇〇のときは?」と、言葉を変えて聞いても答える | 新しい判断をする(判断の責任は持てない) |
| 答えのもとになった資料の箇所を示す(設定やツールによる) | 古い資料と新しい資料のどちらが正しいかを見分ける |
| 同じ質問に何度でも答える | 資料にない、前任の方の頭の中だけにあることを答える |
社内ナレッジAIの答えは、読み込ませた資料の質で決まります。判断の基準まで書いた引き継ぎ書と、業務ごとの手順書がそろっていることが前提です。
社内ナレッジAIの3つの作り方
| 作り方 | どんなものか | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 1. ふだんの生成AIに資料を登録する | ChatGPT・Claude・Geminiなどの、資料を登録して繰り返し使える機能を使う | 1つの部署・1人の業務の引き継ぎ。まず試したい |
| 2. 資料をもとに答えるAIツールを使う | 登録した資料だけをもとに、答えのもとの箇所を示しながら答えるツール(NotebookLMなど)を使う | 答えのもとを確かめながら使いたい |
| 3. 社内向けのサービスを入れる・作る | 社内の共有フォルダやチャットとつなぎ、全社で使える仕組みを入れる | 全社で使う。権限の管理や利用の記録が必要 |
どの作り方でも、会社で使ってよいAIサービスが決まっているかを先に確かめます。社内の資料を入れることになるので、法人向けのプランか、入力した内容を学習に使わない設定になっているかも確かめます。
1人の退職や休業の引き継ぎなら、1か2で十分です。まず小さく試し、使われるとわかってから3を検討するのが失敗しにくい順番です。
小さく始める5つの手順
1. 対象の業務をしぼる
最初から全社の資料を入れず、1つの部署、または退職する方1人の業務にしぼります。「経理の月次の業務」「受発注の業務」くらいの範囲が、答えの正しさを確かめやすい大きさです。
2. 資料を集めて整える
AIが答えやすい資料に整えます。
| 整えること | 理由 |
|---|---|
| 古い資料・下書きを外す | 古い資料と新しい資料が混ざると、古い答えを返すことがある |
| 1つのファイルに1つの業務 | どの業務の話かが、AIにも人にもわかりやすくなる |
| 判断の基準を「〇〇のときは△△する」の形で書く | AIが質問に合う部分を見つけやすい |
| 社内の略語に説明を付ける | 後任の方がちがう言葉で聞いても、答えられるようになる |
| 更新した日と、誰に確認すればよいかを書く | 答えが古くないか、誰に聞けばよいかがわかる |
引き継ぎ書がまだない場合は、AIで引き継ぎ書を作る方法や動画からマニュアルをAIで作る方法で先に作ります。
3. AIに答え方のルールを決める
資料を登録するときに、答え方のルールを書いておきます。この設定で、まちがった答えをかなり減らせます。
あなたは【経理部】の業務について、後任の担当者からの質問に答えるアシスタントです。
答え方のルール:
・登録された資料に書いてあることだけをもとに答えてください
・資料に書いていないことは、推測で答えず「資料に書かれていません。【課長の佐藤さん】に確認してください」と答えてください
・答えの最後に、もとにした資料の名前と、その箇所を書いてください
・資料どうしで内容がちがう場合は、両方を示し、更新日が新しいほうを先に書いてください
・金額や期日など、まちがえると困ることは、資料の文をそのまま引用してください
・新しい判断が必要な質問(資料にない例外など)には、判断せずに確認先を案内してください
4. 前任の方がテストする
前任の方がいるうちに、後任の方が聞きそうな質問を20〜30個してみて、答えが正しいかを確かめます。まちがった答えが出たら、AIの設定ではなく、もとの資料を直すのが基本です。資料の書き方があいまいなことが、まちがいの原因であることが多いからです。
テストの質問は、AIに考えてもらうこともできます。
登録された資料を読んで、この業務を初めて担当する人が聞きそうな質問を30個挙げてください。
特に、例外のとき、期日に間に合わないとき、いつもとちがう依頼が来たときの質問を多めにしてください。
5. 更新の決め方を決める
業務が変わったら、もとの資料を直し、AIに登録し直します。誰が、いつ直すかを決めておかないと、半年ほどで古い答えを返すAIになります。「業務のやり方を変えたら、変えた人がその週のうちに資料を直す」「月に1回、担当者が更新日を見直す」のように決めておきます。
まちがった答えを減らす工夫
- 答えのもとを必ず示させる。後任の方が、資料のその箇所を開いて確かめられるようにします。
- わからないときは確認先を案内させる。「推測で答えない」ことを設定に書きます。
- 大事なことは資料を正とする。金額や期日、法令にかかわることは、AIの答えだけで判断せず、もとの資料を確かめるルールにします。
- よく聞かれる質問は資料に書き足す。AIが答えられなかった質問は、資料に足りないことの一覧になります。
社内ナレッジAIを使うときに気をつけること
- 入れる資料の範囲 給与や人事評価、健康にかかわる情報など、見られる人を限るべき資料は入れません。全社で使う仕組みにする場合は、資料ごとに見られる人を分けられるかを確かめます。
- 会社のルールとサービスの設定 社内の資料を社外のAIサービスに入れてよいか、入力した内容が学習に使われない設定になっているかを確かめます。
- AIは判断の責任を持てない AIは資料から答えを探すことはできますが、新しい判断は会社の方が行います。
まとめ
社内ナレッジAIは、大きなシステムから始める必要はありません。1人の業務、1つの部署の資料から始め、答え方のルールを決め、前任の方がいるうちにテストする。この順番なら、引き継ぎの資料を「読むもの」から「聞けるもの」に変えられます。
引き継ぎにAIを使う方法の全体像は引き継ぎにAIを使う方法、手順書・動画・AIの役割の分け方は引き継ぎマニュアルの作り方でも紹介しています。
よくあるご質問
社内ナレッジAIを作るのに、費用はどのくらいかかりますか?
ふだん使っている生成AIの、資料を登録できる機能を使う場合は、そのサービスの利用料の範囲で始められます。全社で使う専用のサービスを入れる場合は、利用する人数や機能によって費用が大きく変わるので、各サービスで見積もりを取ってください。
資料が少なくても作れますか?
作れますが、資料にないことには答えられません。少ない資料で作ると「資料に書かれていません」という答えが多くなります。その質問の一覧を、資料を書き足す手がかりにしてください。
引継ぎAIを作ってもらうことはできますか?
引継ぎ代行プラスでは、退職・休業する方から業務を聞き取り、引き継ぎ書・動画マニュアルにまとめたうえで、後任の方が質問できる引継ぎAIを用意します。くわしくは引継ぎAIをご覧ください。