引継ぎの進め方
引き継ぎのストレスはなぜ生まれる?3人それぞれの負担と会社ができること
「引き継ぎがストレス」という声は、退職する方からも、後任の方からも聞かれます。本人の段取りの問題に見えますが、負担の多くは、会社が最初に何を決めるかで変わります。
引き継ぎのストレスを抱えるのは、退職する方と後任の方だけではありません。後任が間に合わないあいだ業務を持つ、仮の担当の方にもかかります。この記事では、社長や上司の方に向けて、3人それぞれの負担と、会社ができることを整理します。
引き継ぎでストレスを抱えるのは3人
| 立場 | いつ | 主な負担 |
|---|---|---|
| 退職する方 | 申し出から最終出社日まで | ふだんの業務を回しながら資料をつくる。残りの日数が短い |
| 仮の担当の方 | 退職日から後任の方が入るまで | 自分の仕事に上乗せされる。教わる時間が足りないまま判断を求められる |
| 後任の方 | 入社・異動のあと | 前任の方に聞けない。早く一人で回すことを求められる |
3人の負担はつながっています。退職する方が残せなかったことは、仮の担当の方が手探りで埋めます。仮の担当の方が埋めきれなかったことは、後任の方に残ります。
退職する方のストレス
ふだんの業務を回しながら、資料をつくる
退職が決まっても、日々の業務は止まりません。請求書の準備や取引先とのやりとりを続けながら、空いた時間で引き継ぎの資料をつくることになります。資料づくりは、どうしても後回しになります。
一緒に引き継げる日数が、思ったより短い
退職日までに有給休暇を消化すると、最終出社日は退職日より前になります。退職日まで2か月あっても、実際に一緒に引き継げるのは1か月ほど、ということも少なくありません。日数の数え方は上司が最初の1週間で決めることで紹介しています。
何を、どこまで書けばいいかわからない
長く担当してきた業務ほど、自分がしていることを言葉にするのは難しくなります。手順は書けても、「この取引先にはこうする」「この数字が出たら先に上司に伝える」といった判断の基準は、書き出しにくいものです。
株式会社taiziiiが大企業の管理職200名に聞いた調査では、引継ぎの課題の1位は「暗黙知が共有されない」(39.5%)でした(出典)。書き出しにくいのは、業務の性質によるところが大きいといえます。
迷惑をかけて辞める、という気持ち
引き継ぎが進まないことに、申し訳なさを感じる方もいます。上司からの確認が増えるほど、負担に感じることもあります。進み具合を確かめるときは、責めるのではなく、何が残っているかを一緒に整理する形にすると、話が進めやすくなります。
仮の担当になる方のストレス
自分の仕事に、もう1人分が上乗せされる
後任が退職日に間に合わないとき、多くの会社では、同じ部署の方が仮の担当になります。自分の仕事はそのままで、前任の方の業務が加わります。残業が増え、本来の仕事が遅れることもあります。
教わる時間がないまま、判断を求められる
仮の担当の方は、退職する方の最後の数週間で、急いで業務を教わります。わからないことが出てきても、もう聞く相手がいません。取引先から問い合わせが来れば、判断の基準がわからないまま答えることになります。
後任の方が入ると、今度は教える側になる
後任の方が決まると、仮の担当の方は、自分が手探りで覚えた業務を教える側に回ります。退職する方から仮の担当の方へ、仮の担当の方から後任の方へと、引き継ぎが2回起きます。私たちはこれを二重引継ぎと呼んでいます。引き継ぎのたびに、情報は少しずつ抜けていきます。
後任の方のストレス
前任の方に聞けない
後任の方が入るころには、前任の方がすでに退職していることも多くあります。資料に書いていないことは、聞く相手がいません。仮の担当の方に聞いても、「自分もよくわからない」と返ってくることがあります。
資料が古い、また聞きになっている
前任の方の資料は、退職前の急いだ時期に書かれたものです。その後、仮の担当の方がやり方を変えていれば、資料と実際のやり方が合わなくなります。後任の方は、どちらが正しいのかを確かめるところから始めることになります。
早く一人で回すことを求められる
後任の方には、早く独り立ちしてほしいという期待がかかります。周りも忙しいため、何度も同じことを聞きにくくなります。
株式会社ヌーラボの調査では、20〜25歳のビジネスパーソンの47.8%が「引き継ぎで困った経験がある」と答えています(出典)。引き継ぎを受ける側の負担は、珍しいことではありません。
ストレスが続くと、会社で起きること
| 起きること | 例 |
|---|---|
| 業務の抜けやミス | 年に一度の更新手続きを誰も知らず、期限を過ぎる。取引先ごとの決まりごとが守られない |
| 仮の担当の方の退職 | 負担が長く続き、その方自身の退職につながることがある。そうなると、また同じことがくり返される |
| 後任の方の早い退職 | 聞ける相手がいないまま、立ち上がりに時間がかかる |
| 取引先への影響 | 問い合わせへの返事が遅れる。担当が何度も変わる |
どれも、引き継ぎの段取りを会社が先に決めておけば、減らせることです。
会社ができること
1. 一緒に引き継げる日数を、最初に出す
退職日、最終出社日、有給休暇の残りを確かめ、退職する方と一緒に引き継げる日数を出します。日数がわかれば、引き継ぎのミーティングを先にカレンダーで押さえられます。有給休暇の扱いで迷うことがあれば、顧問の社労士にご確認ください。
2. 業務を書き出し、「止められない/遅らせられる/やめられる」に分ける
ご本人の記憶だけでは抜けが出るので、カレンダーの予定や送信済みメールを見ながら、業務をすべて書き出します。止められない業務から引き継げば、退職する方が全部を引き継ごうとして疲れることを防げます。書き出しに使える業務の棚卸しシートも無料でお配りしています。
3. 仮の担当の方には、業務ごとに範囲を決めて渡す
1人の方にまとめて渡すのではなく、業務ごとに持つ人を決めます。手順どおりの作業は社内の方か外部に、判断が要るものは上司が持つ、という分け方が基本です。仮の担当の方には「どこまでやればよいか」を伝え、本来の仕事のうち後回しにしてよいものも決めておきます。
4. 文書だけでなく、動画や質問できる形で残す
判断の基準や画面の操作は、文書だけでは伝わりにくいものです。退職する方が実際に操作する様子を画面録画で残し、よくある質問をまとめておくと、後任の方があとから確かめられます。残し方は引き継ぎマニュアルを動画とAIで残す方法で紹介しています。
5. 後任の方が入ってからの相談先を決めておく
後任の方がわからないことを、誰に聞けばよいかを決めておきます。上司が週に1回、進み具合と困っていることを聞く時間をとるだけでも、ひとりで抱え込むことを防げます。
仮の担当を置かないという選択肢
二重引継ぎのストレスは、仮の担当の方を置くことで生まれます。後任が決まるまでの業務を、社外に任せるという方法もあります。
社員が辞める・休むときに、外部の会社が業務の引き継ぎ先になるサービスを、引継ぎ代行といいます。退職する方から直接業務を引き継ぎ、後任が決まるまで業務を回し、後任の方に引き継ぎます。仮の担当の方を置かずに済むので、引き継ぎは2回ではなく、外部を通した1本の流れになります。派遣や外注とのちがいは派遣・外注とのちがいで整理しています。
引継ぎ代行プラスでできること
引継ぎ代行プラスは、退職する方(または休業に入る方)からオンラインで業務を引き継ぎ、マニュアル・動画マニュアル・引継ぎAI(質問に答えるAI)にまとめます(月給の50%、1回)。営業事務・受発注・総務などの業務は、後任が決まるまでリモートでお引き受けし(月給の60〜80%/月、最低2か月)、後任の方が慣れるまで最長1か月、業務代行の中で引き継ぎます。経理・総務のうち経理と給与計算は、業務の代行はせず、引き継ぎ(資料化)だけをお引き受けしています。産休・育休の場合は、休業の期間に合わせて業務を持ち、復帰される方に引き継ぎ直します(産休・育休の代わり)。相談と簡易診断は無料で(お問い合わせ)、モニター企業も先着5社募集しています。