引継ぎの進め方
引き継ぎがうまくいかない原因と対策。前任・後任・会社のどこでつまずくか
引き継ぎがうまくいかなかったとき、「前任の方の資料が足りなかった」「後任の方の覚えが遅い」と、どちらかの方の問題として片づけられることがあります。けれど、同じ会社で同じことが何度も起きるなら、原因は人より段取りにあることが多いものです。
この記事では、社長や上司の方に向けて、引き継ぎがうまくいかないときに何が起きているのか、前任の方・後任の方・会社のどこでつまずくのか、会社が直せる順番を整理します。
うまくいかないときに起きていること
まず、よくある困りごとと、その原因、直す場所を並べます。
| 困りごと | よくある原因 | 直す場所 |
|---|---|---|
| 退職後に、誰も知らない業務が出てくる | 業務の書き出しが、ご本人の記憶だけで行われた | 業務の一覧 |
| 後任の方が同じことを何度も聞く | 資料に手順はあるが、判断の基準がない | 残し方 |
| 退職日までに引き継ぎが終わらない | 一緒に引き継げる日数を最初に出していない | 日数 |
| 仮の担当の方が疲れ切っている | 1人にまとめて渡し、範囲を決めていない | 持つ人 |
| 資料と実際のやり方が違う | 仮の担当の期間にやり方が変わり、資料が直されていない | 残し方 |
| 取引先から「話が通っていない」と言われる | 担当が変わることを、誰がいつ伝えるか決めていない | 関係者への連絡 |
どれも、前任の方や後任の方が頑張れば解決する、というものではありません。会社が先に決めておくことで防げます。
前任の方のところでつまずく理由
時間が足りない
退職が決まっても、ふだんの業務は続きます。そのうえ、有給休暇の消化があると、最終出社日は退職日より前になります。引き継ぎの資料づくりは、空いた時間でするしかありません。
自分の業務の全体を、書き出したことがない
毎月の業務は思い出せても、年に一度の手続きや、特定の取引先だけの決まりごとは抜けがちです。長く担当している方ほど、体が覚えていることを言葉にするのは難しくなります。
判断の基準は、言葉にしにくい
「この金額を超えたら上司に相談する」「この取引先は月末に電話をくれる」といった判断は、手順書の形にしにくいものです。株式会社taiziiiが大企業の管理職200名に聞いた調査では、引継ぎの課題の1位は「暗黙知が共有されない」(39.5%)でした(出典)。
後任の方のところでつまずく理由
聞ける相手がいない
後任の方が入るころには、前任の方がすでに退職していることも多くあります。資料に書いていないことは、確かめようがありません。
業務の背景を知らない
手順だけを受け取っても、なぜその順番なのか、何のための作業なのかがわからないと、少し状況が変わっただけで迷います。
一度に覚えることが多い
前任の方の業務をまとめて受け取ると、どれから覚えればよいかがわかりません。急ぐものとそうでないものの区別がないまま、全部を同時に覚えることになります。
会社の段取りでつまずく理由
前任の方と後任の方のつまずきの多くは、次のような会社の段取りから生まれます。
- 一緒に引き継げる日数を出さないまま、引き継ぎを始めている
- 業務の一覧がなく、何を引き継ぐかが前任の方の記憶に任されている
- 後任が間に合わず、仮の担当の方を1人立てて、まとめて渡している
- 残し方が文書だけで、画面の操作や判断の基準が残っていない
- 上司が途中の進み具合を見ていない
特に、後任が間に合わずに仮の担当の方を立てると、引き継ぎは2回起きます。退職する方から仮の担当の方へ、仮の担当の方から後任の方へと渡るあいだに、情報は少しずつ抜けていきます。くわしくは二重引継ぎとはで紹介しています。
会社が直せる順番
1. 一緒に引き継げる日数を出す
退職日、最終出社日、有給休暇の残りを確かめ、退職する方と一緒に引き継げる日数を出します。日数が短ければ、引き継ぐ業務に優先順位を付けます。日ごとの進め方は上司が最初の1週間で決めることで紹介しています。
2. 業務を、記録から書き出す
ご本人の記憶だけに頼らず、カレンダーの予定、送信済みメール、共有フォルダの更新履歴を見ながら書き出します。年に一度の業務は、時期と一緒に書き足します。書き込める業務の棚卸しシートも無料でお配りしています。
3. 業務ごとに、持つ人を決める
書き出した業務を「止められない/遅らせられる/やめられる」に分け、止められない業務から持つ人を決めます。手順どおりの作業は社内の方か外部に、判断が要るものは上司が持つ、という分け方が基本です。1人の方にまとめて渡さないことが大事です。
4. 判断の基準を、質問して聞き出す
判断の基準は、前任の方に「書いてください」と頼んでも出てきにくいものです。次のような質問をして、聞き出した答えを記録します。
| 聞くこと | 例 |
|---|---|
| 例外はどんなときか | 支払いの期日をずらしてよい取引先はあるか |
| 誰に先に伝えるか | 納期が遅れそうなとき、最初に連絡するのは誰か |
| どこまでなら自分で決めてよいか | 値引きや返品に、上司の確認が要る線はどこか |
| 年に一度しかないことは何か | 更新、棚卸し、決算の準備など、いつ何をするか |
| 困ったときに見るものは何か | 過去のメール、取引先ごとのメモ、フォルダの場所 |
5. 見て覚える業務は、動画で残す
画面の操作は、文書で説明するより、実際に操作する様子を録画した方が伝わります。録画した動画と手順書をまとめ、質問すると答えが返ってくる形にしておくと、後任の方があとから確かめられます。残し方は引き継ぎマニュアルを動画とAIで残す方法で紹介しています。
6. 後任の方が入ってからの相談先を決める
後任の方が迷ったときに聞く相手を決め、上司が週に1回、進み具合を確かめます。退職された方に連絡してよいかは、退職する方の了承を得たうえで、期間と範囲を決めておきます。
すでにうまくいかなかったときは
前任の方がすでに退職していて、引き継ぎが十分でなかった場合は、会社に残っている記録から業務を起こし直します。期限のある業務から先に押さえ、送信済みのメールや取引先とのやりとりから、業務の一覧と手順をつくり直します。進め方は後任が決まらないまま退職日が来るときの記事と、経理の引き継ぎがないまま前任者が辞めたときの記事で紹介しています。
引き継ぎ先を、社外に置くという方法
後任が間に合わないとき、仮の担当の方を立てるかわりに、業務の引き継ぎ先を社外に置く方法もあります。社員が辞める・休むときに、外部の会社が業務の引き継ぎ先になるサービスを、引継ぎ代行といいます。退職する方から直接業務を引き継ぎ、後任が決まるまで業務を回し、後任の方に引き継ぎます。派遣や外注とのちがいは派遣・外注とのちがいで整理しています。
引継ぎ代行プラスでできること
引継ぎ代行プラスは、退職する方(または休業に入る方)からオンラインで業務を引き継ぎ、判断の基準まで聞き出して、マニュアル・動画マニュアル・引継ぎAI(質問に答えるAI)にまとめます(月給の50%、1回)。営業事務・受発注・総務などの業務は、後任が決まるまでリモートでお引き受けし(月給の60〜80%/月、最低2か月)、後任の方が慣れるまで最長1か月、業務代行の中で引き継ぎます。経理・総務のうち経理と給与計算は、業務の代行はせず、引き継ぎ(資料化)だけをお引き受けしています。引き継ぎがないまま担当の方が辞めた場合は、記録から業務を起こし直す立て直しもお引き受けしています。相談と簡易診断は無料で(お問い合わせ)、モニター企業も先着5社募集しています。