引き継ぎ資料の作り方。何をどこまで用意するか、残り期間別の作り方と例
引き継ぎ資料を作ってほしいと言われても、何を、どこまで作ればいいのかは決まっていないことがほとんどです。丁寧に作ろうとすると時間が足りず、急いで作ると後任の方が使えない資料になります。
この記事では、引き継ぎ資料を「一式」として考え、何をどこまで用意するかを、退職日までの残り期間ごとに紹介します。資料の中心になる引き継ぎ書は、無料のテンプレート(Excel・Word)を登録なしでダウンロードできます。
引き継ぎ資料に入れるもの
引き継ぎ資料は、1つの文書ではなく、役割のちがう資料の組み合わせです。全部をそろえる必要はなく、業務と残り期間に合わせて選びます。
| 資料 | 役割 | 作る手間 |
|---|---|---|
| 引き継ぎ書(業務一覧と判断の基準) | 業務の全体と、「こういうときはこうする」を伝える | 中 |
| 年間カレンダー | 年1回・月1回の業務を、いつ何をするか伝える | 小 |
| 関係者の一覧 | 社内外の誰と、何をやりとりしているか伝える | 小 |
| アカウント・権限の一覧 | 使っているシステムとID、パスワードの保管場所を伝える | 小 |
| 進行中の案件の一覧 | やりかけのことと、次にやることを伝える | 小 |
| 手順書(マニュアル) | 業務の手順を、順番どおりに伝える | 大 |
| 画面操作の録画 | クリックの順番や、画面のどこを見るかを伝える | 中 |
| ファイルの整理 | 共有フォルダの場所と、どのファイルが最新かを伝える | 中 |
この中で、どの業務でも必ず作るのは、引き継ぎ書と、関係者・アカウント・進行中の案件の一覧です。手間が小さく、抜けたときの影響が大きいためです。手順書と録画は、業務の数と残り期間を見て、作る範囲を決めます。
残り期間別に、どこまで作るか
退職日までに一緒に働ける期間によって、作れる資料は変わります。有給休暇の消化がある場合は、最終出社日までの日数で考えます。
| 最終出社日まで | 作る資料 | 後回しにする資料 |
|---|---|---|
| 1か月以上 | 引き継ぎ書、年間カレンダー、関係者・アカウント・案件の一覧、主な業務の手順書と録画、ファイルの整理 | ─ |
| 2〜4週間 | 引き継ぎ書、年間カレンダー、関係者・アカウント・案件の一覧、録画(手順書の代わり) | 手順書は録画で代える。ファイルは場所だけ書く |
| 2週間未満 | 引き継ぎ書(業務一覧と判断の基準だけ)、関係者・アカウント・案件の一覧、録画(よく使う業務だけ) | 手順書、年間カレンダーの細かい部分、ファイルの整理 |
時間が足りないときに削ってはいけないのは、判断の基準と関係者・アカウントです。手順は録画を見れば後任の方が追えますが、判断と連絡先は前任の方がいなくなると誰にもわかりません。残り2週間を切っている場合の進め方は、退職日までに引き継ぎが間に合わないときにまとめています。
引き継ぎ資料の作り方。5つの手順
1. 業務を書き出し、資料が要る業務を決める
最初に、担当している業務をすべて書き出します。3か月分のカレンダー、送信済みのメール、共有フォルダの更新履歴を見ると、漏れが減ります。書き出したら、業務ごとに次のどれかに分けます。
- 後任の方に引き継ぐ業務 資料を作る
- ほかの人に渡す業務 渡す相手に直接説明する。資料は引き継ぎ書の1行で足りる
- やめる業務・減らす業務 引き継がない。やめることを上司が決めて、関係者に伝える
退職は、業務を見直すきっかけにもなります。慣例で続けていた業務をやめれば、作る資料も減ります。
2. 引き継ぎ書を作る
業務ごとに、目的、頻度、期日、使うツール、判断の基準を書きます。書き方と例文は引き継ぎ書の書き方でくわしく紹介しています。
3. 画面操作は録画で残す
手順書を文章で書くより、画面を録画しながら説明したほうが早く、後任の方にも伝わります。1本は1つの業務、長くても5〜10分を目安にします。録画のファイル名に業務名を入れ、引き継ぎ書の「手順書・録画」の欄にリンクを書いておくと、後で探せます。
4. 関係者・アカウント・案件の一覧を作る
この3つは表にするだけなので、時間はかかりません。引き継ぎ書のテンプレートには、それぞれのシートを用意しています。パスワードそのものは書かず、保管場所だけを書きます。
5. 後任の方と一緒に使ってみる
資料ができたら、後任の方に資料を見ながら業務をやってもらい、前任の方が横で見ます。資料に書いていないことを聞かれたら、その場で書き足します。後任の方が決まっていない場合は、上司や、決まるまで業務を持つ方が代わりに確認します。
引き継ぎ資料の目次の見本
資料一式をまとめるときは、最初に目次を作っておくと、後任の方が全体を見渡せます。営業事務の場合の見本です。
| 番号 | 資料 | 中身 |
|---|---|---|
| 0 | はじめに読むもの | 引き継ぎ書(業務一覧・判断の基準・関係者・アカウント・案件) |
| 1 | 業務の全体図 | 受注から請求までの流れ(下の「業務フローの書き方」) |
| 2 | 手順書 | 受注の入力/出荷の手配/見積書の作成/納期の回答(1業務1枚) |
| 3 | 録画 | 販売管理の受注入力(5分)/見積テンプレートの使い方(4分) |
| 4 | よく使うファイル | 単価表(最新版)、見積テンプレート、取引先一覧 |
| 5 | 年間カレンダー | 単価改定、休業の案内、期末の締め |
業務フローの書き方
業務がいくつもの部署や取引先にまたがる場合は、流れを1枚にまとめた図があると、全体がつかみやすくなります。むずかしい図は必要ありません。次のように、誰が、何をして、次に誰に渡すかを順に書くだけで足ります。
| 順番 | 誰が | 何をする | 次に渡す先 |
|---|---|---|---|
| 1 | 取引先 | FAX・メールで注文を送る | 営業事務 |
| 2 | 営業事務 | 販売管理に受注を入力する | 倉庫 |
| 3 | 倉庫 | 出荷する | 営業事務 |
| 4 | 営業事務 | 月末に請求書を発行する | 経理 |
表で書いておけば、あとで図にするのも簡単です。判断が分かれるところ(「単価が登録とちがうときは営業担当に確認」など)は、判断の基準として引き継ぎ書に書きます。
どのソフトで作るか
| ソフト | 向いている資料 |
|---|---|
| Excel・Googleスプレッドシート | 業務一覧、年間カレンダー、関係者・アカウントの一覧など、表にするもの |
| Word・Googleドキュメント | 手順書、文章で説明するもの |
| PowerPoint | 業務の全体図、画面のキャプチャに説明を付けるもの |
| 画面の録画 | クリックの順番や画面の見方など、文章にしにくい操作 |
ソフトを1つにそろえる必要はありません。引き継ぎ書を目次の役割にして、それぞれの資料へのリンクを置いておけば、後任の方は迷いません。
職種ごとの引き継ぎ資料の例
同じ引き継ぎ資料でも、職種によって厚くする部分がちがいます。
| 職種 | 厚くする資料 | 例 |
|---|---|---|
| 経理 | 年間カレンダー、判断の基準 | 月次・年次の締めの日程、税理士事務所とのやりとり、支払いの承認の流れ |
| 給与計算 | 年間カレンダー、関係者の一覧 | 年末調整・算定基礎届などの時期、社労士事務所との分担 |
| 営業事務・受発注 | 判断の基準、関係者の一覧 | 取引先ごとの締め日・単価のルール、急ぎの注文の扱い |
| 総務 | アカウント・権限の一覧、年間カレンダー | 備品・契約書の台帳、各種契約の更新時期 |
| 広報・EC・Web | アカウント・権限の一覧、進行中の案件 | 広告やECの管理画面、SNSの運用ルール、代理店とのやりとり |
経理と給与計算は、期限とお金に関わる業務が多く、引き継ぎの漏れがそのまま支払いや手続きの遅れにつながります。一人経理が辞めると決まったら、給与計算の担当者が辞めるときで、職種ごとに確認することを紹介しています。
引き継ぎ資料が使われないのを防ぐ
時間をかけて作った引き継ぎ資料が、後任の方に開かれないことがあります。理由は主に3つです。
- 探せない 資料が何十ページにもなり、知りたいことがどこにあるかわからない
- 古い 作ったあとで業務が変わり、資料が直されていない
- 判断が書かれていない 手順はわかるが、例外が起きたときにどうすればいいかわからない
探せない問題は、資料を1つにまとめるより、引き継ぎ書を目次の役割にして、手順書や録画へのリンクを置くと減らせます。資料に質問できるAIを用意して、「〇〇のときはどうする?」と聞ける形にする方法もあります。くわしくは引き継ぎマニュアルの作り方で紹介しています。
引き継ぎ資料の置き場所と渡し方
作った資料は、1つのフォルダにまとめ、引き継ぎ書を一番上に置きます。フォルダの中は、次のように分けると探しやすくなります。
| フォルダ | 入れるもの |
|---|---|
| 00_引き継ぎ書 | 引き継ぎ書(業務一覧・判断の基準・年間カレンダー・関係者・アカウント・案件) |
| 01_手順書 | 業務ごとの手順書。ファイル名に業務名を入れる |
| 02_録画 | 業務ごとの画面の録画。ファイル名に業務名と録画した日を入れる |
| 03_よく使うファイル | テンプレート、単価表など。最新版だけを置き、古い版は別のフォルダに移す |
個人のパソコンや個人のクラウドに資料を置いたままにすると、退職後に開けなくなります。会社の共有フォルダに置き、後任の方と上司が開けることを、最終出社日の前に確かめます。
よくある質問
引き継ぎ資料は、いつから作り始めればよいですか? 退職や異動が決まったら、その週のうちに作り始めます。最終出社日の1週間前に一度できあがり、残りの1週間を後任の方との確認に使える日程が目安です。期間の考え方は引き継ぎ期間の目安にまとめています。
引き継ぎ資料は、前任の方が一人で作るものですか? 作るのは主に前任の方ですが、どの業務を誰に引き継ぐか、どこまで作るかは上司が決めます。後任の方にも、作りかけの段階で見てもらうと、わかりにくいところが早く見つかります。
引き継ぎ資料に、パスワードを書いてもよいですか? 書かないでください。資料には保管場所だけを書き、パスワードは社内のパスワード管理ツールなどで受け渡して、退職後に変更します。
引継ぎ代行プラスでできること
引継ぎ代行プラスは、退職する方(または休業に入る方)からオンラインで業務を引き継ぎ、引き継ぎ資料にあたる業務一覧と判断の表、マニュアル、動画マニュアル、引継ぎAI(質問に答えるAI)にまとめます。料金は退職する方の月給の50%(1回)です。資料を作る時間がない場合や、後任の方が決まっていない場合は、決まるまでの業務もリモートで代行できます(営業事務・受発注・総務など。経理・給与計算は引き継ぎまで)。相談と簡易診断は無料です(お問い合わせ)。